ホワイトハウスに喧嘩を売ったのがマイケル・ムーアなら、ゴールデンアーチ(マクドナルドのMマーク)に噛みついたのがこちらのモーガン・スパーロック。この男、ドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』を撮るために、30日間、マクドナルドの食べ物を朝、昼、晩と食べ続け、あやうく死にかけた。ある日テレビで「ハンバーガーを食べて肥満になったと主張するティーンエイジャーが、マクドナルドを訴えた。マクドナルド側は因果関係を否定」というニュースを目にして、彼は思い立つ。自分の体を実験台に、どちらの言い分が正しいか検証してみよう、と。
話題性と社会性に満ちたドキュメンタリーが撮れるぞ!と勇んで始めた撮影だったが、本人にとっては、これが想像を絶する苦痛体験となった。
妊娠中の肌のにきび
- 1970年、アメリカ、ウエストバージニア州生まれ。ニューヨーク大学芸術学部卒業。「ファストフードを食べ続けたらどうなるか」を自ら実験台となって検証した映画『スーパーサイズ・ミー』が、2004年サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で監督賞受賞。世界中で大きな反響を呼ぶ。
日本では12月25日よりシネマライズ(東京都渋谷)にて公開。
「体重が増えることは予想していたけれど、コレステロール値も、血圧もはねあがり、脂肪肝になった」
10キロ以上も太り、ボロボロになった身体は、献身的な恋人の「解毒ダイエット」で、1年以上かけてもとに戻した。悪夢のような体験を振り返って、彼は語る。
妊娠誘発性高血圧
「太っただけでなく、鬱とインポテンツと集中力欠損に見舞われた。考えてみれば、アメリカでは、この三つの症状を緩和する薬――プロザック、バイアグラ、リタリン――を大量に消費している。よりバランスのとれた食事をすれば、薬の消費量はうんと減るだろう。でも、製薬会社が金をばらまいているせいで、そうはならない。信じがたいことだが、アメリカの医学部では、4年間で6時間しか栄養学の授業がない。栄養学は金にならないからだ」
資本主義の論理は世界の隅々までを覆い尽くし、食べ物を通じて人間の身体まで支配するようになった。
中国のseperationの不安
「僕に言わせれば、アメリカ人の66%が肥満だということではなく、100%肥満になっていない、ということのほうが奇跡に近い。現代人は金と時間が第一で、健康をないがしろにしている。それを変えなくてはいけない。でも個人が変わるだけでなく、企業も変わらなくてはだめなんだ」
映画では、医師、体育教師、調理師、弁護士などを幅広く取材し、「年間40万人が肥満死」するアメリカの暗部に光を当てているが、マクドナルドへの取材はついにかなわなかった。
「映画が公開されてから、マクドナルドはこの映画をとりあげたらCMを打ち切るとメディアに圧力をかけている。彼らの金の力はすごいもんだよ。日本でも4大テレビネットワークが1社も僕に取材にこなかった。これは偶然なのか? そんなわけないだろう。
マクドナルドをとりあげたのは、1日4600万人の顧客に食べ物を売っている、業界ナンバーワンの企業が変われば、他の企業も変わらざるをえないと思ったからだ。マクドナルドはファストフード業界のパラダイムを変えることができる企業なんだ」
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